滞納しやすい税金・保険料の種類

「税金を滞納している」という状況は、思っている以上に多くの人が経験しています。特に滞納しやすいのは以下の種類です。

滞納が多い税金・公的負担
  • 住民税:普通徴収(自分で納める)の人は特に注意
  • 国民健康保険料:フリーランス・退職後に未納になりやすい
  • 国民年金保険料:若年層・低収入者の未納が多い
  • 所得税・消費税:確定申告後に一括納付できず滞納するケース
  • 固定資産税:不動産を持つ個人・自営業者

これらは「払わなくても何もされない」と思っている人が多いですが、実際には段階的かつ強制的な手続きが待っています。

滞納すると何が起きるか

税金を滞納したときの流れは、税目によって多少異なりますが、大まかには以下のように進みます。

1
督促状が届く(滞納後20日以内) 法律上、納期限から20日以内に督促状を送ることが義務づけられています。この時点では延滞税が加算され始めています。
2
電話・訪問による催告(1〜3ヶ月後) 市区町村や税務署の徴収担当から連絡が来ます。この段階で相談に応じてもらえる可能性が最も高いです。
3
差し押さえ予告通知(3〜6ヶ月後) 「差し押さえを執行する」という予告通知が届きます。これが来たら早急に窓口へ連絡が必要です。
4
財産の差し押さえ(6ヶ月〜1年後) 銀行口座・給与・不動産・自動車などが差し押さえられます。預金は即日凍結されることもあります。
⚠️ 税金の差し押さえは裁判所の判決が不要です。民間のローンと違い、行政は単独で強制執行できます。対応が遅れるほどリスクが高まります。
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延滞税・延滞金の怖さ

税金を滞納すると、元の税額に加えて延滞税(国税)または延滞金(地方税)が上乗せされます。

延滞税の税率(2026年現在の目安)
  • 納期限翌日〜2ヶ月:年約2.4%(特例基準割合による)
  • 2ヶ月超:年約8.7%(最大14.6%になるケースも)
  • 長期化すると元本の数十%が上乗せされることも

住民税50万円を1年滞納すると、延滞金だけで4〜7万円以上になることがあります。早めの対処が損を防ぐ唯一の方法です。

差し押さえを止める2つの猶予制度

ここがこの記事の中心です。税金の滞納には、差し押さえを止めるための正式な制度があります。窓口で「分割にしてください」と頼むのとは別物で、申請書を出して認められれば、法律上の効果が発生します。

制度は2つ。どちらに当てはまるかで、出す書類も期限も変わります。

差し押さえを止める制度は2つ。使い分けが要ります 「分割にしてください」と頼むのと、猶予制度を申請するのは別の話です 納期限を過ぎている/過ぎそう 徴収猶予 国税通則法46条/地方税法15条 特定の事情があるとき 換価の猶予(申請によるもの) 国税徴収法151条の2 特定の事情はないが払えないとき こんなときに使います ・災害にあった、盗難にあった ・本人や家族が病気・けがをした ・事業を廃止した、休止した ・事業に著しい損失を受けた こんなときに使います 一時に納付することにより 事業の継続または生活の維持を 困難にするおそれがあるとき = 多くの人はこちらに当てはまります 申請書と提出先 納税の猶予申請書 税務署/自治体の納税課へ 期限:事情が生じたら速やかに 申請書と提出先 換価の猶予申請書+財産収支状況書 税務署/自治体の納税課へ 期限:納期限から6か月以内 どちらが認められても、起きることは同じです ・新たな差し押さえが止まる ・すでにされた差し押さえも解除されることがある ・分割で納付できる(原則1年以内、延長で最長2年) ・延滞税が軽減される
税金の差し押さえを止める2つの猶予制度。この図解は、出典「よりそいマネー(shakkin-yorisoi.jp)」の明記でご自由に転載いただけます

換価の猶予——多くの人はこちら

根拠は国税徴収法151条の2。2015年4月に創設された、納税者が自分から申請できる制度です。

条件は「一時に納付することにより、事業の継続または生活の維持を困難にするおそれがあること」。災害や病気といった特別な事情は要りません。単純に「今まとめて払うと生活が回らない」という状態であれば該当します。だから多くの人はこちらです。

ただし期限があります。納期限から6か月以内。これを過ぎると、申請による換価の猶予は使えません。滞納に気づいたら、まずこの6か月を意識してください。

徴収猶予——特定の事情があるとき

根拠は国税通則法46条(地方税は地方税法15条)。次のような事情がある場合に使えます。

こちらは納期限からの期間制限がありません。事情が生じたら速やかに申請します。該当する事情があるなら、換価の猶予よりこちらを検討してください。

認められると何が起きるか

2つの制度で、効果はほぼ同じです。

この4つ目は見落とされがちですが、金額として大きい。延滞税は納期限の翌日から発生し、2か月を過ぎると税率が跳ね上がります。猶予が認められた期間はこれが軽くなるので、放置し続けるのとは総額が変わります。

申請の実務——何をどこに出すか

提出先

いきなり書類を郵送するより、まず窓口か電話で相談してください。猶予制度を使いたい旨を伝えれば、必要な書式を教えてもらえます。書式は各自治体・国税庁のサイトからダウンロードできます。

必要な書類

担保が必要と聞いて諦める人がいますが、「提供できる財産がない」場合は免除されます。これは非常に重要な点です。担保がないことは、申請しない理由になりません。

書き方で押さえるところ

財産収支状況書では、収入から生活費を引くと、いくらしか残らないかを示します。ここが「一時に納付すると生活の維持が困難」の裏づけになります。

猶予は認められた後で納付を怠ると取り消され、そこから差し押さえに進みます。だから申請の段階で、確実に払える額を書くことが決定的に重要です。見栄を張る場面ではありません。

申請が通らなかったら

不許可の場合、理由が通知されます。財産があると判断された、資料が不足している、といった理由なら、補正して再申請できます。

また職権による換価の猶予(国税徴収法151条)という別ルートもあります。こちらは納税者の申請ではなく徴収職員の判断によるもので、期限の制限がありません。申請が通らなかった場合でも、窓口で状況を説明し続ける意味はあります。

財産調査で何を見られるのか

「税金 差し押さえ 調査」で調べている方へ。差し押さえの前に、行政は財産調査を行います。何をどこまで見られるのかを、正確に書きます。

調査の範囲

徴収職員には質問検査権があり、裁判所の令状なしに次のことができます。

照会に本人の同意は不要で、事前の通知もありません。「勝手に調べられた」と感じるかもしれませんが、法律上の権限に基づくものです。だから財産を隠す、名義を移すといった対応は意味がなく、かえって悪質と判断されます。

何が差し押さえられるか

給与はいくらまで押さえられるか

全額ではありません。次を差し引いた残りが差押えの対象になります(国税徴収法76条)。

たとえば手取り25万円・扶養家族1人なら、10万+4万5千=14万5千円が確保され、残り10万5千円の一部が対象になる、という計算です。生活できない額まで持っていかれることはありません。

ただし預貯金は話が違います。いったん口座に入金されると給与としての性質を失うと扱われ、残高がまるごと押さえられることがあります。給与の差押えより預金の差押えのほうが打撃が大きいのは、このためです。

差し押さえられないもの

最後の点は重要です。年金や手当が振り込まれる口座を差し押さえられると、実質的に生活費が消えます。この場合、「差押えが違法だ」と主張できる余地があるため、すぐに窓口と弁護士に相談してください。放置してはいけない場面です。

「分割の相談」と「猶予の申請」は別物です

ここを混同している人が非常に多いので、独立させて書きます。

  窓口での分割の相談 猶予制度の申請
法的な位置づけ 事実上の運用 法律に基づく処分
差し押さえ 法的には止まらない 止まる・解除されることも
延滞税 通常どおり発生 軽減される
手続き 口頭で足りることが多い 申請書と財産収支状況書

窓口で「分割で払います」と伝えて納得してもらえた場合でも、それは法的に差し押さえを止めるものではありません。担当者が変わったり、約束どおり払えなかったりすれば、そのまま差し押さえに進むことがあります。

だから窓口では、こう伝えてください。

「換価の猶予の申請をしたいので、必要な書類を教えてください」

制度名を出すかどうかで、話が変わります。「払えません」だけでは、督促の手続きが進むだけです。

それでも払えないときの減免・免除

猶予は「待ってもらう」制度で、税額そのものは減りません。額を減らす・免除するのは別の制度です。

国民健康保険料の減免

失業、廃業、収入の大幅減少、災害などで保険料そのものが減額・免除されることがあります。とくに会社都合の離職(特定受給資格者)は、前年の給与所得を30%として計算する軽減が受けられます。これは知らないと使えないので、離職票を持って国保の窓口へ。

住民税の減免

自治体ごとに条例で定められています。生活保護に準ずる状態、失業、著しい収入減、災害などが対象になることがあります。基準も申請期限も自治体によって違うので、必ず自分の市区町村に確認してください。

滞納処分の停止

最後の手段として、国税徴収法153条の「滞納処分の停止」があります。財産がなく、差し押さえるものが何もない、生活が著しく困窮している——といった場合に、徴収そのものが停止されます。停止が3年続くと、納税義務が消滅します。

これは納税者から申請する制度ではなく、行政の判断によるものです。ただし実情を正確に伝えなければ判断されません。生活が立ち行かない状態なら、その事実を窓口で具体的に伝えてください。

税金は自己破産では消えません

重要な点なので明記します。税金・社会保険料は「非免責債権」です。自己破産をしても、これらの支払義務は残ります。

ということは、順番があります。

  1. まず税金の猶予制度を申請する——差し押さえを止めるのが先
  2. 次に、他の借金を債務整理する——カードローンなどを整理して、税金を払う余力を作る

逆はできません。税金だけが残るからです。カードローンの返済で税金が払えなくなっているなら、整理すべきはカードローンのほうです。任意整理で月々の返済が下がれば、その分を納税に回せます。

この設計は自分では組みにくいので、相談のときに「税金の滞納もあります」と必ず伝えてください。言わないと、税金を考慮しない返済計画が組まれてしまいます。

よくある質問

税金を滞納すると、差し押さえまでどれくらいですか?
納期限から20日以内に督促状が発送され、その督促状を発した日から10日を経過した日までに完納されないときは、法律上いつでも差し押さえが可能になります。ただし実務上はすぐには行われず、催告や納税相談を経るのが通常です。とはいえ税金は裁判を経ずに差し押さえができる(自力執行権がある)ため、カードローンなどより展開が速いことがあります。差し押さえの通知が来る前に、猶予制度の申請を進めてください。
「換価の猶予」と「徴収猶予」は何が違いますか?
使える条件が違います。徴収猶予(国税通則法46条)は、災害・盗難・病気・事業の廃止や休止・事業の著しい損失といった特定の事情があるときに使う制度で、納期限からの期間制限がありません。換価の猶予(国税徴収法151条の2)は特定の事情がなくても、一時に納付すると事業の継続または生活の維持が困難になるおそれがあれば使えます。多くの人はこちらに当てはまります。ただし納期限から6か月以内という申請期限があります。
窓口で分割にしてもらえば、差し押さえは止まりますか?
法的には止まりません。窓口での分割の相談は事実上の運用にすぎず、担当者が変わったり約束どおり払えなかったりすれば、そのまま差し押さえに進むことがあります。差し押さえを法的に止めるには、猶予制度の申請が必要です。窓口では「換価の猶予の申請をしたいので、必要な書類を教えてください」と制度名を出して伝えてください。猶予が認められれば延滞税も軽減されるので、金額としても違いが出ます。
担保がないと猶予は受けられませんか?
受けられます。担保の提供は原則必要とされていますが、猶予を受ける金額が100万円以下の場合、猶予期間が3か月以内の場合、そして担保として提供できる財産がない場合は不要です。担保がないことは申請しない理由になりません。ここで諦めてしまう人が多いのですが、財産がないからこそ猶予が必要な状況であり、制度もそれを前提にしています。窓口で「担保にできる財産がありません」と伝えてください。
すでに給与を差し押さえられています。もう手遅れですか?
手遅れではありません。猶予が認められると、新たな差し押さえが止まるだけでなく、すでにされた差し押さえが解除されることがあります。給与や預金が押さえられている状況では、ここが最も効きます。ただし換価の猶予には納期限から6か月以内という申請期限があるため、期限を過ぎている場合は職権による換価の猶予(国税徴収法151条)を求めることになります。まず窓口で現状を伝えてください。
自己破産すれば、税金も免除されますか?
されません。税金と社会保険料は非免責債権とされており、自己破産をしても支払義務が残ります。だから順番が重要です。まず税金の猶予制度を申請して差し押さえを止め、次にカードローンなどの他の借金を債務整理して、税金を払う余力を作る。この順番になります。相談のときに「税金の滞納もあります」と必ず伝えてください。言わないと、税金を考慮しない返済計画が組まれてしまいます。
税額そのものを減らしてもらうことはできますか?
猶予は「待ってもらう」制度なので、税額は減りません。額を減らす制度は別にあります。国民健康保険料には失業・廃業・収入減・災害による減免があり、とくに会社都合の離職では前年の給与所得を30%として計算する軽減が受けられます。住民税の減免は自治体ごとに条例で定められており、基準も期限も自治体によって違います。いずれも申請しなければ適用されないので、窓口で該当するか確認してください。
財産が何もなく、払える見込みが立ちません。
国税徴収法153条に「滞納処分の停止」という制度があります。差し押さえる財産がない、滞納処分をすることで生活が著しく困窮する、といった場合に徴収そのものが停止され、停止の状態が3年続くと納税義務が消滅します。これは納税者が申請する制度ではなく行政の判断によるものですが、実情を伝えなければ判断されません。生活が立ち行かない状態なら、収入と支出の実態を具体的に窓口で伝えてください。生活保護の申請と並行して相談する場面でもあります。
📌 参考・出典
  • 国税庁「延滞税の計算方法」→ https://www.nta.go.jp/
  • 国税庁「滞納となった場合の対応(差し押さえ)」→ https://www.nta.go.jp/
  • e-Gov 法令検索「国税徴収法」→ https://laws.e-gov.go.jp/
  • ※ 延滞税率は毎年改定されます。最新の税率は国税庁ウェブサイトでご確認ください。
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執筆
よりそいマネー編集部
借金・債務整理に関する情報をわかりやすく提供することを目的として運営しています。記事の内容は公開情報・法令をもとに作成していますが、個別の法律相談は専門家にご確認ください。
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務・法律アドバイスではありません。具体的な手続きについては、税務署・市区町村の窓口、または税理士・弁護士にご相談ください。