奨学金返済の実態
大学・大学院を卒業後、多くの人が直面するのが奨学金の返済です。日本学生支援機構(JASSO)の調査によると、第二種奨学金(有利子)を4年間借りた場合の平均貸与総額は約350万円。月々の返済は1万5,000円〜2万円程度になることが多く、就職直後の給与では重くのしかかります。
- 就職できたが給料が低く、返済が家計を圧迫している
- 非正規雇用・フリーランスで収入が不安定
- 病気・育児で一時的に収入が減った
- すでに数ヶ月滞納してしまっている
- 他のローンとの返済が重なっている
しかし奨学金には、苦しいときに使える公式の救済制度がいくつも存在します。「知らなかった」だけで損をしている人が非常に多いのが現状です。
返済猶予制度(返還期限猶予)
JASSOの「返還期限猶予」は、一定の条件を満たせば最長10年間、返済をいったん止められる制度です。猶予中は利息も発生しません(第一種奨学金の場合)。
猶予が認められる主な条件
| 理由 | 条件の目安 |
|---|---|
| 経済困難 | 年収が基準額以下(例:給与所得者で年収300万円以下) |
| 傷病 | 病気やケガで返済が困難な状態 |
| 失業 | 離職・解雇等で無職の状態 |
| 育児・介護 | 子の養育や家族の介護で就労が制限されている |
| 大学院進学 | 在学中は返済が猶予される |
猶予はあくまで「先送り」であり、猶予が終わると残りの期間に圧縮して返済が続きます。根本的な解決にはなりませんが、収入が回復するまでの「時間稼ぎ」として非常に有効です。
減額返還制度
毎月の返済額を2分の1または3分の1に減らすことができる制度です。返済額を減らした分は返済期間が延びますが、月々の負担がすぐに軽くなります。
申請の条件
- 年収が一定基準以下であること(給与収入のみの場合、目安は年収325万円以下)
- 返済が困難な事情が認められること
- 月2万円の返済 → 月1万円に減額(返済期間は2倍に延びる)
- 月1万5,000円の返済 → 月5,000円に減額(返済期間は3倍に延びる)
- 猶予と違い、毎月少しずつでも返し続けることで延滞状態にならない
就職したばかりの低収入時期や、育休・産休中など、一時的に収入が減っているときに特に効果的な制度です。
所得連動返還型奨学金
2017年度以降に採用された比較的新しい制度で、毎年の所得に応じて返済額が自動的に決まる仕組みです。収入が低い年は返済額も少なく、収入が増えれば返済額も増えます。
所得連動の仕組み
年間返済額は前年の所得の約9%が目安です。たとえば年収200万円なら年間18万円(月約1万5,000円)、年収100万円なら年間9万円(月約7,500円)となります。年収がほぼゼロの場合、返済額もほぼゼロになります。
返還免除の条件
奨学金の全額または一部が免除される制度もあります。ただし条件は限られています。
死亡・障害による返還免除
返還者本人が死亡した場合、または精神・身体の障害で返還が困難になった場合は、残額が全額免除されます。
給付型奨学金への転換
2020年度から始まった「高等教育の修学支援新制度」により、低所得世帯の学生は給付型奨学金を受けられるようになりました。すでに貸与型で借りている人は対象外ですが、在学中であれば切り替えを検討できます。
滞納してしまったら
奨学金を滞納すると、段階的に深刻な影響が出ます。滞納した状態で放置するのが最も危険です。
滞納の影響
- 3ヶ月以上の滞納:信用情報機関(CIC・JICC)に延滞として登録される
- 信用情報への傷:クレジットカード作成・住宅ローン・マイカーローンが通らなくなる可能性がある
- 保証人への請求:機関保証ではなく人的保証を選んだ場合、連帯保証人・保証人に請求が行く
- 法的措置:長期延滞が続くと裁判所を通じた強制執行(給与差し押さえ等)に発展することがある
すでに滞納している場合
すでに数ヶ月滞納している場合でも、JASSOに連絡して猶予や分割交渉を申し出ることができます。無視せずに連絡することが最優先です。また、債務が膨らんでいる場合は弁護士・司法書士に相談し、奨学金を含めた総合的な債務整理を検討することも選択肢です。
まとめ
- 奨学金には返済猶予(最長10年)・減額返還(1/2〜1/3)の公式制度がある
- 所得連動返還型なら収入ゼロの年は返済もほぼゼロになる
- 猶予・減額の申請はJASSOのサイトからオンラインで可能
- 滞納前に申請することで信用情報への傷を防げる
- すでに滞納中でも放置せず、JASSOまたは専門家へ連絡を
あなたの状況に合った解決方法を、今すぐ確認できます。
- 日本学生支援機構(JASSO)「奨学金の返還について」→ https://www.jasso.or.jp/
- 文部科学省「奨学金制度について」→ https://www.mext.go.jp/
- 法テラス(返済困難時の相談窓口)→ https://www.houterasu.or.jp/