携帯審査には2種類ある——どちらが問題になるか
「借金があると携帯が契約できない」と一括りに言われますが、これは半分だけ正しい表現です。携帯の契約には性質のまったく違う審査が2つあり、どちらに引っかかっているかで、できることが変わります。
審査① 回線の契約——見ているのは「キャリアへの不払い」
電話番号を持つための契約です。ここで見られるのは信用情報機関ではなく、キャリア各社が業界内で共有している不払い情報です。過去に携帯料金を踏み倒したことがあるか、それだけを見ています。
つまりカードローンをいくら借りていても、携帯料金さえ払っていれば、この審査には出てきません。「借金があるから回線契約もできないのでは」という心配は、多くの場合は杞憂です。
審査② 端末の分割払い——見ているのは信用情報
スマホ本体を分割で買うとき、これは割賦販売法上のクレジット契約になります。だからCICなどの信用情報機関を照会します。カードローンの延滞や債務整理の記録があれば、ここで止まります。
この2つは別々に判定されます。だから「端末の分割は通らなかったが、回線契約はできた」ということが普通に起こります。
2つの決定的な違い——消えるものと、残るもの
この2つで最も大事な違いは、回復の仕方です。
- 不払い情報は、払えば消えます。未払いの携帯料金を完済すれば解除され、契約できるようになります。期間の縛りはありません
- 信用情報の事故情報は、払っても約5年残ります。完済しても即座には消えず、時間の経過を待つしかありません
だからいま動かせるのは前者だけです。未払いがあるなら、それを解消することが最短の道になります。後者は時間が解決します。
大手キャリアと格安SIM(MVNO)の審査の違い
格安SIMのほうが審査は緩い傾向があります。ただし「緩い」の中身を正確に理解してください。
- 回線契約の審査:MVNOは大手キャリアの不払い情報共有に参加していない事業者もあるため、大手で断られてもMVNOなら通ることがあります
- 端末の分割審査:これは信用情報を見るので、MVNOでも同じように通りません。緩いのは回線側だけです
- 支払い方法:クレジットカード必須の事業者が多い中、デビットカードや口座振替に対応した事業者を選べば、カードが作れない状態でも契約できます
携帯料金の滞納と信用情報——ブラックになる条件
携帯料金そのものも、一定の条件下で信用情報に影響します。これを知らずに滞納を放置すると、借金以外の理由で信用情報が傷つきます。
信用情報に載る条件
・登録期間:最大5年間(解消後も5年残る)
・影響範囲:クレジットカード・ローン・携帯の分割払い審査すべてに波及
・格安SIMの料金滞納:CIC未加盟のため信用情報には載らないことが多い(ただし強制解約・督促はある)
滞納から強制解約までの流れ
債務整理をすると携帯はどうなるか——手続き別に見る
いちばん心配されるところなので、手続きごとに分けて書きます。結論から言うと、対象に含めなければ携帯は止まりません。
任意整理——携帯を対象から外せば影響なし
任意整理は債権者ごとに個別交渉する手続きなので、対象にする借金を選べます。携帯会社を対象に含めなければ、契約はそのまま継続します。回線も止まりません。
ただし端末の分割が残っている場合は注意です。端末代の分割は割賦契約なので、これを整理の対象に含めると、携帯会社は債権者の一社になります。この場合は回線ごと解約されることがあります。
実務では「携帯は対象から外してください」と最初に伝えるのが定番です。車のローンを外して車を守るのと同じ考え方です。
個人再生・自己破産——原則すべてが対象になる
この2つは債権者を選べません。全債権者を平等に扱う必要があるためです(債権者平等の原則)。端末の分割が残っていれば、携帯会社も債権者として扱われます。
その結果どうなるか。
- 端末の分割が残っている→ 携帯会社が債権者になり、契約解除・回線停止の可能性があります
- 端末の分割がない(一括購入済み・使用中の端末に残債なし)→ 通信料金の未払いさえなければ、原則そのまま使えます
つまり分かれ目は「端末の残債があるか」です。手続きの種類ではありません。ここを取り違えている解説が多いので、自分の端末に残債があるかを先に確認してください。
手続き前にやっておくと違うこと
- 端末の残債を確認する。キャリアのマイページで残り回数と残債が出ます
- 可能なら一括で払い切っておく。残債が消えていれば、携帯会社は債権者になりません
- 電話番号を維持したいと弁護士に伝える。設計の段階で考慮されます
- 家族名義の回線を確認する。あなたが契約者になっている家族の回線も、同じ影響を受けます
状況別:今できる対処法
ケース1|借金はあるが、携帯料金は払っている
回線契約は問題なくできます。端末の分割だけが通らない可能性がありますが、これも信用情報に事故がなければ通ります。カードローンの残高があること自体は、審査に出てきません。
心配なら、CICに自分の信用情報を開示してみてください。1,000円台でスマホから申し込めます。「たぶんダメだろう」と諦める前に、事実を確認するほうが早い。
ケース2|携帯料金の未払いがある
これが最も動かしやすい状態です。不払い情報は完済すれば解除されるので、払えば契約できるようになります。期間を待つ必要はありません。
金額が大きくて一括では払えない場合、キャリアの支払い窓口に分割を相談できます。詳しくは携帯料金を滞納すると何日で止まるかにまとめました。
ケース3|信用情報に事故情報がある
回線契約はできます。端末を一括で買うか、中古端末を持ち込んでください。
中古端末は数千円から手に入りますし、以前使っていた端末が手元にあればそれでかまいません。SIMロックは2021年10月以降の販売分では原則かかっていないので、多くの場合そのまま使えます。「分割が組めない=携帯が持てない」ではありません。
ケース4|強制解約されて、未払いが残っている
ケース2と3が重なった状態です。順番があります。
- まず未払いを解消する。ここが解けないと大手はどこも通りません
- その間の連絡手段はプリペイドSIMやデータ専用SIMで確保する。審査が無いか緩いものがあります。通話はIP電話アプリで代替できます
- 完済後、デビットカードか口座振替に対応した格安SIMで契約する
- 端末は当面、中古の一括購入で
未払いの金額が大きくて解消の目処が立たないなら、それは携帯だけの問題ではありません。全体を見直す段階です。
端末が分割で買えないときの、現実的な買い方
信用情報に事故があって分割が組めない——ここで止まってしまう人が多いのですが、端末は分割以外でも手に入ります。むしろ家計を立て直す時期には、分割を組まないほうが正しい判断です。
中古端末を一括で買う
2〜3世代前の機種なら、状態の良いものが1〜3万円程度で流通しています。日常の用途では新品との差をほとんど感じません。
選ぶときの注意点は3つです。
- 「赤ロム」を避ける。前の持ち主が端末代を滞納すると、キャリアに利用制限をかけられて通信できなくなった端末のことです。販売店の商品ページに「ネットワーク利用制限:○」と書かれているものを選んでください。「△」は将来制限がかかる可能性があります
- SIMロックを確認する。2021年10月以降に販売された端末は原則ロックがかかっていません。それ以前のものは、使いたい回線に対応しているか確認が必要です
- バッテリーの状態。iPhoneなら設定から最大容量を確認できます。80%を下回っていると1日もたないことがあります
今持っている端末をそのまま使う
解約した端末が手元にあるなら、それが最も早い解決です。端末の分割が終わっていれば、そのまま別の回線で使えます。SIMカードを差し替えるだけです。
ただし分割が残っている端末を解約した場合、残債は払い続ける義務があります。端末を使い続けるかどうかとは無関係です。ここを誤解して「解約したから払わなくていい」と放置すると、割賦契約の延滞として信用情報に載ります。
eSIMという選択肢
物理的なSIMカードを差さず、端末に直接プロファイルを書き込む方式です。申し込みから開通まで最短で数十分なので、いま回線が止まっていて急ぐ場合に向いています。対応端末が必要ですが、近年の機種はほぼ対応しています。
回線が持てない期間を、どう凌ぐか
未払いの解消に時間がかかる場合、その間の連絡手段をどう確保するか。ここが実務上いちばん困るところなので、具体的に書きます。
審査のない・緩い回線
- プリペイドSIM——先払いなので与信が不要です。コンビニや家電量販店で買えます。データ通信中心なら、これで日常は回ります
- データ専用SIM——音声通話が付かない代わりに審査が緩い、または不要な事業者があります。月額数百円から
- デビットカード・口座振替に対応した格安SIM——クレジットカードが作れない状態でも契約できます。事業者ごとに対応が違うので、申し込み前に支払い方法の欄を確認してください
通話をどう確保するか
データ通信さえあれば、通話はアプリで代替できます。ただし090/080から始まる電話番号が必要な場面があるので、そこは注意してください。
- 役所の手続き、銀行の本人確認、求人への応募——ここでは携帯番号を求められることが多い
- IP電話サービスなら050番号が取れます。多くの場面では足りますが、フリーダイヤルにかけられない、緊急通報ができないといった制限があります
- 就職活動中なら、番号の確保を最優先にしてください。連絡が取れないことで機会を失うのが、この状況で最も損失が大きい
SMS認証が使えなくなる問題
見落とされがちですが、実害としては大きい。電話番号が変わると、その番号で認証していたサービスに入れなくなります。銀行アプリ、QR決済、フリマアプリ、SNS。
回線が止まる前、あるいは番号が変わる前に、主要なサービスの登録番号を新しい番号に変えるか、認証方法をメールや認証アプリに切り替えておいてください。止まってからでは、本人確認書類を送っての復旧手続きになり、数週間かかることがあります。
よくある誤解を整理する
ネットには古い情報や誤解が混在しています。正しく知っておきましょう。
→ 誤りです。回線のみ・格安SIMなら多くの場合契約できます。問題になるのは主に「端末の分割払い審査」です。
→ 原則として回線契約は続けられます。端末代金の分割残高がある場合は強制解約になる可能性があります。免責後は新規回線契約も可能です。
→ 誤りです。大手キャリアはCICに加盟しており、61日以上・3ヶ月以上の滞納は事故情報として登録されます。
→ 事業者によります。端末セットで分割購入する場合はCICを参照するケースもあります。SIMのみ・一括端末購入が確実です。
→ そのとおりです。格安SIMのSIMのみプラン+中古端末の組み合わせなら、信用情報に関係なく今すぐスマホを使い続けられます。
よくある質問
- CIC(指定信用情報機関)「信用情報とは」「情報開示」→ https://www.cic.co.jp/mydata/
- 割賦販売法(クレジット契約・信用情報の利用に関する規定)→ https://laws.e-gov.go.jp/
- 貸金業法(信用情報機関の加盟義務)→ https://laws.e-gov.go.jp/
- 法テラス(日本司法支援センター)→ https://www.houterasu.or.jp/