借金も相続される
親が亡くなると、預貯金・不動産などのプラスの財産だけでなく、借金・ローン・保証債務などのマイナスの財産も相続されます。親の死後に消費者金融や銀行から請求書が届いて初めて借金の存在を知る、というケースは珍しくありません。
- 消費者金融・カードローンの残債
- 住宅ローン・車のローン
- 連帯保証人として負っていた保証債務
- 未払いの税金・医療費
- 友人・知人への個人的な借金
特に怖いのが「連帯保証債務の相続」です。親が知人の借金の連帯保証人になっていた場合、その保証人の立場ごと相続されます。知人が借金を返せない状況になると、突然子どもに数百万円の請求が来ることがあります。
3ヶ月の熟慮期間
民法915条により、相続人は「自分が相続人であることを知った日」から3ヶ月以内に、相続するか放棄するかを決める必要があります。何もしないと自動的に「単純承認」(借金ごと相続)したとみなされます。
この3ヶ月は「親が死亡した日」ではなく、「自分が相続人になったことを知った日」から起算します。親の死後しばらく経ってから借金の存在を知った場合も、知った日から3ヶ月がカウントされます。
3つの選択肢
① 単純承認(何もしない場合の結果)
プラスの財産もマイナスの財産もすべて引き継ぎます。借金がプラス財産を上回っていても全額返済義務が生じます。3ヶ月以内に何も手続きをしないと自動的にこの状態になります。
② 相続放棄
家庭裁判所に申し立てることで、最初から相続人ではなかったことになります。借金を一切引き継がない代わりに、プラスの財産も受け取れません。「借金だけ放棄して預金だけもらう」はできません。
③ 限定承認
プラスの財産の範囲内でのみマイナスの財産を引き継ぐ手続きです。「相続財産で足りる分だけ払えばいい」という制度ですが、相続人全員が共同で申し立てる必要があり、手続きが複雑なため実務上はあまり使われません。
相続放棄の手続き
相続放棄は家庭裁判所への申し立てで行います。弁護士・司法書士に依頼することもできますが、比較的シンプルな場合は自分でも手続き可能です。
- 申し立て先:被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所
- 収入印紙:1人につき800円
- 弁護士・司法書士に依頼:3〜5万円程度(事務所により異なる)
- 郵送申し立て可:遠方でも可能
相続放棄できなくなる行為
相続放棄の申し立て前に以下の行為をすると、「単純承認」したとみなされ、相続放棄ができなくなることがあります。
・親の預貯金を引き出して使った
・親の財産(家具・車など)を売却・処分した
・親の借金を自分で返済した
・親名義の口座から公共料金の引き落としが続いている(意図的な場合)
「葬儀費用に親の口座を使った」は一般的に認められますが、それ以外の財産の処分・消費には注意が必要です。
期限を延ばす方法
財産の調査に時間がかかる場合や、相続人が多く話し合いに時間が必要な場合は、家庭裁判所に申し立てることで3ヶ月の熟慮期間を延長できます。
- 「相続の承認又は放棄の期間の伸長」申請を家庭裁判所へ提出
- 申し立ては3ヶ月の期限が切れる前に行う必要がある
- 認められれば数ヶ月単位で延長可能
- 費用:収入印紙800円+郵便切手
まとめ
- 親の借金・保証債務は死亡と同時に相続される
- 相続を知った日から3ヶ月以内に「放棄」「限定承認」「単純承認」を決める
- 何もしないと自動的に借金ごと相続(単純承認)になる
- 相続放棄は家庭裁判所への申し立てで手続きでき、費用は800円〜
- 親の財産を使い込んだり処分すると放棄できなくなるので注意
あなたの状況に合った解決方法を、今すぐ確認できます。
- 法務省「相続放棄の申述について」→ https://www.moj.go.jp/
- 裁判所「相続の放棄の申述」→ https://www.courts.go.jp/
- e-Gov 法令検索「民法(相続)第5編」→ https://laws.e-gov.go.jp/